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ピープル

キュレーター、イム・デシク

2016-10-18

ネットユーザーが作るオリジナル番組をネットで生中継する韓国の配信サイト、アフリカTV。毎週日曜日の午後9時、このアフリカTVで、オークションを通じて美術作品を販売する番組「アートラジオ」が放送されています。オークションは、実況掲示板、つまり番組を見ているネットユーザーの書き込みで進められます。

アーティストと大衆が直接コミュニケーションできる番組「アートラジオ」を立ち上げたのはキュレーターのイム・デシクさんです。画家であり、キュレーターとしても活動しているイム・デシクさんは、2014年からソウルで小さなギャラリーを経営しています。イム・デシクさんが一番関心を持っているのは美術の大衆化です。彼は、誰でも気軽に美術作品に触れ、美術市場を訪れることができる環境、美術アーティストが伸び伸びと作品活動できる環境を作るために努力しています。



イム・デシクさんが経営しているギャラリーの名前は「サロン・アーターテイン」。ギャラリーという名称を使わず、サロンとしたのはイム・デシクさんのアイデアでした。近寄りがたいイメージの空間になってしまったギャラリーの代わりに、誰でも気軽に立ち寄ってビールやコーヒーを飲みながら作品を見ることができるという意味を込めて、サロンと呼ぶことにしたのです。イム・デシクさんのギャラリーに入ると、大きなテーブルがあって、コーヒーやお茶を出してくれます。気軽に美術作品を見てもらうための気配りです。アーティストのための気配りもあります。作品が売れた時の収益配分は、アーティスト7割、ギャラリー3割と決めています。イム・デシクさんのアーティストへの気配りは韓国の美術業界で広く知られています。特に、実力は持っているけれど、美術市場でまだ認められていない新人のアーティストに対する関心と愛情は格別です。9月30日、イム・デシクさんは新人アーティストだけのための展示館「ステージ」をオープンしました。「ステージ」は生まれて初めての個展を開くアーティスト、つまり、アマチュアだった人がアーティストとして美術界に第一歩を踏み出す展示会で、実力と可能性を持った新人を発掘するための展示館です。



イム・デシクさんがアーティスト中心の環境、美術市場を作ろうと努力している理由は西洋画家として活動していた頃の経験があったからです。美術大学に進み、大学3年生の時に大きな美術展で優秀賞を受賞した彼は、画家としての道を歩んでいました。しかし、韓国の美術界に根付いた不公平なシステムに失望し、画家の夢をあきらめる決心をしたのです。画家はあきらめても、美術はあきらめられなかった彼はアメリカへ渡って、10年間、キュレーターとして活動しました。アメリカでキュレーターとして働きながら、アーティスト、キュレーター、ディーラーがそれぞれの活動に集中できるアメリカのシステムを韓国にも取り入れてみたいと思いました。しかし、アメリカでギャラリーをオープンしようと準備していたイム・デシクさんは、経済不況の影響で破産してしまいます。2011年、無一文の状態で韓国に戻ったイム・デシクさんは韓国のギャラリーでキュレーターとして働きながら多くのアーティストに出会いました。3年という短い期間に、どのようなルートで作品が売れ、美術市場がどのようなシステムで動いているか、そして、コレクターの好みとレベルについても知ることができました。

2014年、独立を決心したイム・デシクさんでしたが、まだギャラリーを経営するほどの余裕がなかったため、まず美術教育の事業を立ち上げました。ところが、親しくしていたアーティストたちが自らの作品を展示するようになり、いつの間にか、事務所だった空間がギャラリー「サロン・アーターテイン」になっていたのです。「サロン・アーターテイン」では、作品の展示だけでなく、美術関連の教育プログラムも進められています。美術作品に関心のある若いコレクターを対象にアーティストやキュレーター、ディーラーが韓国の美術市場について、またコレクターが持つべき哲学などについて教えているのです。

コレクターの層を広げることが美術市場を広げ、さらにアーティストの活発な活動につながると考えるイム・デシクさん。彼は、美術と大衆をつないでいくために、今も走り続けています。

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