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文化

自己啓発本『セイノの教え』

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2024-03-21

玄海灘に立つ虹


〇本日は、自己啓発本『セイノの教え』をご紹介します。セイノというのは著者のペンネームですが、英語のSay Noで、NOと言えということです。これまで信じていたことにNOと言えという意味だそうです。この本は一言で言えば「金持ちになる方法」について書かれた本なのですが、昨年発売されてからベストセラーになっています。本を買う時にびっくりしたのは、値段が7200ウォンでめちゃくちゃ安いんですね。735ページというすごい分厚い本なんですが、著者が印税を受け取らないと言ったそうです。だからというか、誰に対してもこびてないところが魅力だと思いました。正直に書いていて、この手の本では普通使わないようなスラングも出てきたりするんですが、そういう新鮮さもあって、幅広い世代が手にしているのかなと思います。

〇著者は1955年生まれで、親が亡くなって高校生の時から経済的に非常に苦労するんですが、そこから様々な事業や投資で儲けて、純資産が1000億ウォンという資産家になったそうです。2000年代初めからメディアで執筆を始めて、何度も出版オファーを受けながら断ってきて、やっと2023年に出版ということで、かなり前に書かれた文章も含まれています。
サブタイトルを見ると、피보다 진하게 살아라(血より濃く生きろ)とあるんですね。最近はなんだか、がんばらなくて大丈夫というほわっとしたエッセイが多いなかで、ビシビシ厳しく指摘される感じの内容でした。例えば、「血と汗と涙と時間なしに何を得ようと言うのか」という感じで、楽して儲けるには、という本では決してないんですね。とりあえず努力せよというのは大前提です。

〇私がこの本でなるほどなと思ったのは、「頭のいい人たちはほとんど大学や研究所、法曹界や医療系、または有名企業にいる。なんとうれしい事実だろう」という部分で、金持ちになるには特別な才能や学閥が必要なわけでなく、普通の人たちとの競争に勝てばいいのだということです。自分のフィールドで勝負すればいい、上ばかり見てあきらめるなということですよね。「金持ちになるためのライバルは天才でなく、自分自身だ」と述べています。 
みんなが常識だと思い込んでいることを覆す、そういう内容が多いのですが、例えば「できるだけストレスを避ける」という常識。著者は、ストレス解消と言ってビールを飲むのでなく、正面から問題に向き合えと述べています。逃げるなと。「結局ストレスは問題を解決すればなくなる」という、正論です。是枝裕和監督の講演を聞いたことがあるんですが、「ストレス解消はどうしているんですか」という質問に「僕、ストレスをあんまり感じないんですよね」って答えていたのを思い出しました。映画作りなんて問題の連続だと思うんですが、問題は解決するものという姿勢で挑めば、実はあまりストレスにはならないのかもしれない。問題を問題として残したまま逃げ回るから、ストレスがたまるということですよね。

〇735ページもあるので全部はまだ読めてなくて、興味のある項目からちょっとずつ読んでるんですが、私も昨年韓国で会社を作ったので、「事業をやる時に知っておくべきこと」という部分は真っ先に読みました。まずは「かっこつけるな」というアドバイスなのですが、ベンチャー企業が月に何千万ウォンの賃貸料を払って江南の一等地に事務所を構えて、すぐに消えていくという例も多いそうです。身の丈に合った事務所で堅実にスタートせよということですが、わりと日本の人はそういう傾向だとは思います。ただ、韓国ではその逆で、ちょっと見栄を張るぐらいでないとなめられるって言われることも多いです。だけども、やっぱり見栄を張っても限界がありますよね。長続きしないと思います。著者本人の経験やたくさんの実例を見てきた経験から述べているので説得力があります。

〇私自身、あまり金持ちになりたいという欲望がない方で、借金せずに食べていければいいぐらいに思ってはいるんですが、この本の中ではたくさんの本が紹介されているのも魅力で、「本をどう読むのか」という読書法に関しても書かれていたり、興味を持って読める部分がたくさんありました。「本屋に行け」というアドバイスは私もまさにそう思っていて、いくらネットで本が買える時代でも、本屋に行くと、全体の傾向もよく分かるし、本屋だから出あう本もあります。
事業に関してだけでなく、人生に関する幅広い内容が含まれた本でした。今のところ日本語版は出ていないと思いますが、韓国語で読める方、機会があれば読んでほしいなと思います。

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