ⓒ gettyimagesbankいそがしく人々が行き交うソウルの街中には、いろんな音があふれています。
なにげなく毎日耳にして、いつの間にかすっかり馴染んでいる音もあります。例えば、地下鉄の車内で流れるメロディ。2009年からソウルメトロで乗換駅に到着する際の車内案内とともに流れたのは、「オルシグヤ(얼씨구야)」という国楽をアレンジしたメロディでした。2009年は韓国訪問の年。そこで、韓国内外の多くの人々に国楽に触れてほしいという主旨から、国立国楽院が提供した楽曲が採用されました。韓国の独特なリズム、「チャンダン」に合わせて伝統楽器の演奏が調和した曲。このメロディを聞くと自然に、地下鉄の乗換駅の案内放送の声がよみがえってくる、というくらい、ソウルの人々の耳に馴染んだ音でした。
ちなみに、このメロディになる前の2000年代はじめは、一部の地下鉄ではヴィヴァルディの「調和の霊感第6番」という荘厳なメロディが流れていたこともあったそうです。
そうして、ソウルの地下鉄にすっかり浸透したこのメロディは、2023年に14年ぶりに新しい曲へと変わりました。それが、現在ソウル地下鉄1号線から8号線で耳にする「プンニョン(豊年)」という曲です。前年にソウル交通公社が5つの音源を公開してアンケートをとり、一番得票率が高かったことでこの曲が選ばれました。豊作の年を歌った民謡「풍년가」をもとに、カヤグムの演奏をメインに現代風にリメイクされた曲。前の「オルシグヤ」に比べるといっそう軽快でポップなメロディになっています。
この時期に曲を新しく変えたことについて、ソウル交通公社は「コロナ禍で疲れた乗客のみなさんに心理的な安定を提供するとともに、変わりゆくトレンドを反映するため」と説明しています。たしかに、初めて聞いたときはとても新鮮でびっくりしました。
そうして乗換駅の新しいシグナルとして定着しつつあるこのメロディが、じつはこの1月にリニューアルされることが発表されました。というのも、カヤグムの独奏の音の周波数が、列車の騒音の周波数帯域に重なってよく聞こえなくなるときがあることが判明したからです。
リニューアルバージョンは、同じメロディのまま演奏がテグム、ソグム、ヘグム、ヤングムといった管弦楽器のアンサンブルになったもの。よりいっそう華やかな音になっています。これは今年の上半期から順次、路線ごとに適用していく予定だとのことです。今年ソウルに来られる予定のある方は、地下鉄に乗ったら乗換駅でぜひ耳を傾けて聞いてみてください。