建設会社「ポスコE&C」の工事現場で相次いで発生した労働災害をめぐり、関係当局が12日、家宅捜索など強制捜査に乗り出しました。
「ポスコE&C」は、韓国の鉄鋼最大手「ポスコ」の持ち株会社、「ポスコ・ホールディングス」の建設子会社で、ことしだけで作業員の死亡事故が4件も発生しています。
警察と雇用労働部は、「ポスコE&C」の工事現場で感電とみられる事故が発生して8日目となる12日、合わせて70人あまりを投入し、仁川(インチョン)の松島(ソンド)にある「ポスコE&C」本社と下請け会社の事務所、現場事務所など5か所に対して同時に家宅捜索を行いました。
警察は、業務上過失致傷の疑いで、雇用労働部は、産業安全保健法違反の疑いで、それぞれ会社関係者を立件し、捜査を進めています。
事故に遭った作業員は、下請け会社に所属するミャンマー国籍の労働者で、事故後1週間以上にわたって意識不明の状態が続いていましたが、12日になって意識を取り戻したということです。
事故当時、工事現場だった地下道路は豪雨で浸水していて、作業中に事故に遭った作業員は、排水作業のためにポンプを操作していた際に、感電したとみられています。
捜査の焦点は、漏電を防ぐための安全措置が適切に取られていたかどうかに置かれています。
「ポスコE&C」をめぐっては、ことし1月に、マンションの建設現場で作業員が墜落して死亡。4月には、新安山(シンアンサン)線の工事現場で崩落事故が起きたほか、別の複合住宅建設現場でも墜落事故がありました。さらに7月には、高速道路の工事現場で、作業員が機械に巻き込まれて命を落としていて、ことしだけで作業員の死亡事故が4件も発生しています。
重大災害処罰法の施行から3年が経過しましたが、勤務中に命を落とした労働者の数は2000人に上り、その半数は、建設業に携わっていたとされています。
こうした背景から、政府は、「安全」を守れなかった企業には「損失」が発生するよう、処罰の水準を引き上げる必要があるとみています。
しかし、最低価格入札制や工期短縮の圧力など、構造的な問題が絡んでいるため、処罰の強化だけでは根本的な解決につながらないという指摘もあります。
政府は、重大災害を引き起こした企業に対して、融資の制限や入札参加の禁止といった措置を検討していて、来月、総合対策を発表する方針です。