北韓の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の妹、朝鮮労働党の金与正(キム・ヨジョン)副部長が2日連続で談話を発表し、非核化交渉には応じないという立場を示しましたが、専門家からは、米朝首脳会談の開催に向けた「環境づくり」を求めるメッセージだという見方が出ています。
金副部長は28日の談話で、「韓国政府との対話の意思はない」と否定的な立場を示したのに続いて、29日には「米朝の首脳同士の関係は悪くない」としながらも、「非核化を前提とした対話には応じない」とする談話を発表しました。
これについて、専門家らは、北韓が自らを「核保有国」として誇示し、もはや容易に取り扱える相手ではないということを強調することで、アメリカとの対話に先立ち「交渉力」を高めようとしているという見方を示しています。
元統一部長官の丁世鉉(チョン・セヒョン)氏は30日に出演した時事系ラジオ番組で、「北韓はすでに2022年の憲法で核保有国であることを明記している。また、ロシアによるウクライナ侵攻以降は、ロシアと確固たる同盟関係を築いたことで、強力な核大国であるロシアという後ろ盾を得た」と評価しました。
こうしたことから、「過去のように経済的見返りだけで北韓が核を放棄するという期待は幻想であり、確実な見返りが用意された条件下でだけ、米朝対話が可能であるという立場を北韓は明確にしている」という見解を示しました。
一方、金副部長が2日続けて談話を発表したことについて、大統領室の報道官は29日、「極めて異例のことで注視している」と述べました。
また、与党「共に民主党」の有力者らからは、一部で提案されていたAPEC=アジア太平洋経済協力会議首脳会議への金正恩国務委員長の招待を進めるべきだという声も上がっています。