朝鮮王朝の宮殿から日本・鎌倉市の鎌倉大仏で知られる高徳院に移築されたお堂の「観月堂(クァノルダン)」が、100年の時を経て韓国に返還されました。
「観月堂」の返還をめぐっては、2010年にも韓日仏教交流協議会の関係者同士の話し合いにより、「観月堂」を再び韓国に戻すという協約が交わされましたが、具体的な時期や方法については未定のまま、現在に至っていました。
国家遺産庁と高徳院は、最近「観月堂」の建物を解体し、瓦や石材、木材などの建築資材を韓国に運んで、京畿道(キョンギド)坡州(パジュ)市の伝統建築修理技術振興財団に保管しているということです。
海外にあった韓国の建物が丸ごと返還されたのは、今回が初めてとなります。
「観月堂」は、朝鮮王室と関連のある建物とされていて、高さ11.3メートルの鎌倉大仏の裏手に建っています。
これまで高徳院は「観月堂」について、「1924年、日本の企業家の杉野喜精氏が、目黒区の自宅にあったものを寄贈した」と説明していました。
しかし、学界では、朝鮮王室が借金の担保として朝鮮殖産銀行に譲渡し、その後、朝鮮殖産銀行が財政難で日本の山一証券の前身である山一合資会社から融資を受けた際に、当時社長に就任した杉野喜精氏に寄贈されたとみています。
国家遺産庁は、「光復80周年と韓日国交正常化60周年を迎えた、ことしに行われた今回の返還が、両国の文化における交流と未来志向の協力に向けた象徴となることを期待する」と述べました。
また、国家遺産庁は、今後、専門人材による修理作業を行い、元の名称と位置などに関する研究を進める方針です。