尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の妻、金建希(キム・ゴニ)夫人が関与したとされる株価操作事件をめぐり、「嫌疑なし」と結論づけた検察幹部2人が相次いで辞意を表明しました。背景には、ソウル高等検察庁がこの事件の再捜査に着手したことがあるという見方が出ています。
辞意を表明したのは、李昌洙(イ・チャンス)ソウル中央地方検察庁長と趙尚源(チョ・サンウォン)第4次長検事で、2人は20日、法務部に辞表を提出しました。
尹前大統領に近いとされる2人は去年、株価操作事件をめぐって金夫人に対し「嫌疑なし」として不起訴とする結論を出し、国会から「捜査が不十分だった」として弾劾訴追されましたが、憲法裁判所がことし3月にこれを棄却し、復職していました。
しかし、ソウル高等検察庁は先月25日、この事件の再捜査を正式に決定していて、検察関係者の間では、再捜査の決定が、2人にとって重荷となったのではないかという見方が出ています。
ただ、検察では現在も、金夫人の党の公認候補介入疑惑や政治ブローカーとの関係に関する別の捜査が進行中で、この時点での辞表提出が適切であったかについては、法曹界のなかでも意見が分かれています。
一部では、次期大統領選挙で最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)前代表の当選が有力視されているのも影響したという見方が出ています。
李地方検察庁長はこれまで、李前代表に関する不正献金事件など、「共に民主党」の関係者が関与した事件を多く捜査、起訴してきました。
そのため、李前代表が大統領に当選すれば、李地方検察庁長が監察の対象となる可能性もあると一部では見られていますが、本人は「大統領選挙とは関係のない決定だ」と強調しています。
2人が同時に辞表を出したことで、公認候補選びに不正介入した疑惑など、主な事件の捜査にも当面、影響が避けられない見通しです。