韓国文化シリーズ第37回の今日は、“北斗七星”というテーマで韓国文化を探っていきたいと思います。
韓国のことわざの中に、成し遂げることが極めて難しいとされることを表す言葉、 ‘하늘의 별따기’(空の星を取る)というものがあります。確かに空の星はなかなか手にすることは難しそうですが、最近、都心では、星を取ることなどは夢の夢、夜空に星を見つけることさえ難しくなっています。空に星が浮かんでいることさえ、忘れて暮らしているというのが現状ですよね。昔の人々は、夜になると、必ずきらきら光る星を見上げては、様々なことに思いをはせたといいます。さらに星には特別な力があるとも考えられていたそうです。朝鮮時代の女性が残したある詩にも、北斗七星が登場しています。内容を簡単にご説明しますね。北斗七星1つ,2つ,3つ,4つ,5つ,6つ,7つの星たちよ、私の願いを聞いてください。恋しいあの方がいらっしゃったから、この夜がどうか、ゆっくりと明けるようにしておくれ。
韓国人は、空に浮かぶ数々の星の中でも、特に、北斗七星に寄せる思いが強いと言われています。北斗七星はひしゃくの形をしていて、夜空で明るく光っているため、誰でも簡単に見つけ出すことができます。西洋でもたびたび、神話の中に登場したりもしますよね。韓国でも、先史時代と言われる文明以前の時代に作られたコインドルと言われる墓石に北斗七星が刻まれているのが発見されました。また高句麗時代の墓からも北斗七星のの壁画が出土したということです。空には東西南北、四つの方角を守る神がいると考えられていますが、北斗とは、北の空を司る神、という意味があるそうです。さらに空を神と見立てたとき、北はその喉と舌に当たるということから、北斗七星は、空それ自体を象徴する星として捉えられてきたとも言われています。古くから空は、人の運命をも左右する力を持っているとされてきたため、北斗七星は人間の生き様、寿命、幸福、災いなどと関連があると信じられてきました。昔、一家の母たちが家族の健康と家庭の和平を祈願するため、甕の上に水を汲んで、北斗七星に祈りをささげたそうです。また、ムーダンがクッといわれるお払いを行う際にも、北斗七星を祀ることが多かったといいます。さらに、お寺に行くと、お釈迦様を祭った本堂とは別に、チルソンガク(七星閣)という小さな建物があるのですが、こうしたところにも、やはり北斗七星が神格化して祀られているんです。こうしたことから、仏教が韓国に根付く際、もともと人々の間で深く信じられてきた北斗七星信仰をたくみに受け入れたという風にみることができるかと思います。
済州島では、昔から北斗七星と関連する伝説の中に、年老いた母に親孝行を尽くした息子たちが死後に星となったという話や、あの世の尊い薬を手に入れ、父の命を救ったパリ姫の息子が7つの星となったという話が伝えられています。済州島に伝わる、北斗七星にまつわる数々の伝説には、不思議なことに、全て女性が関連しているという点が伺えます。おそらく、女性が他の地域に比べて多く、また女性が家庭のやりくりを主導していた済州島の風習が反映されているものとも言えるかもしれません。
♬ ケミョンジョ、ピョンロン“北斗七星”
♬ チェジュ、チルモリダングッの中から、チルソンボンプリ
♬ ピョルクムジャ