ユネスコ=国連教育科学文化機関は、韓国の市民団体などが申請していた旧日本軍の慰安婦関連の資料について、世界記憶遺産への登録の判断を延期しました。
韓国や中国など9つの国と地域の市民団体は、元慰安婦の証言や写真など、あわせて2744件を世界記憶遺産に登録するよう申請し、韓国政府も、「慰安婦問題を歴史的な教訓にしなければならない」として、登録を後押ししていました。
世界記憶遺産は登録申請のあった資料をユネスコ国際諮問委員会(IAC)が審査し、ユネスコ事務局長が最終決定する仕組みです。
日本政府は、記憶遺産の審査方法見直しを求めて、ユネスコへのことしの分担金およそ34億8000万円の拠出を見合わせるなどして、登録阻止に総力を挙げ、IACとユネスコは関係国の利害が対立する案件について関係国から意見を聴取するという来年の制度改革案を前倒しして適用する形で判断見送りを決めたとみられています。
日本は、ユネスコへの分担金9.7%を負担しており、最大の分担金拠出国となっています。
慰安婦関連資料は、ユネスコの審査で、人権蹂躙(じゅうりん)を受けた被害者が勇気を振り絞って証言し、これが真相究明の動きにつながったという点でその重要性を認められ、「代替不可能で唯一の資料」と高く評価されましたが、日本政府に登録を阻まれた形となりました。
これについて、韓国外交部は31日、遺憾の意を表明するとともに、「慰安婦問題を歴史の教訓として未来世代に伝えるため努力を続けるのが政府の一貫した立場だ」として、民間団体の申請を改めて支持しました。