文在寅(ムン・ジェイン)政権の脱原発政策で建設工事が一時中断している、釜山(プサン)市と蔚山(ウルサン)市にまたがる、新古里原発5号機と6号機について、国民の意見を取りまとめながら建設の是非を議論してきた「公論化委員会」は20日、建設再開を政府に勧告しました。
文大統領は2基の建設中止を大統領選挙での公約として掲げていましたが、すでに1兆6000億ウォンが投じられ、完成率が3割近くに達している原発の建設を中止すれば、地域経済に大きな打撃を与えかねないという世論の声が高まっていました。
これを受けて、文大統領は、公論化委員会を設置して国民の意見を聞き、市民の審査員に最終的な判断を委ねることを決めました。
公論化委員会は、市民審査員を対象に4回にわたる「世論調査」を実施し、15日に議論に参加した国民471人を対象に最終調査として討論型世論調査をおこなったものです。
最終調査では、建設再開を求める意見が59.5%で、建設中断40.5%を19ポイント上回りました。
ただ、長期的な原発政策については、「長期的には原発を縮小すべき」という答えが53.2%で最も多くなっています。「維持すべき」が35.5%、「拡大すべき」が9.7%でした。
委員会の勧告を受けて、大統領府青瓦台は20日、「勧告を尊重し、それに基づいて後続の措置を取る」としており、24日の閣議で建設再開を決定する見通しとなっています。
青瓦台は、そのうえで、「世界的にも脱原発は大きな流れで、再生可能エネルギー産業への投資を拡大するという政府の基調は、今後も維持していく」と述べました。
青瓦台はまた、「熟議民主主義」と呼ばれる今回の意思決定プロセスについて、「感動的なものだった」と述べ、今後、ほかの社会的懸案の解決においても活用していく考えを示しました。
今回の決定で、文在寅大統領は、エネルギー政策の運用において、大枠では「脱原発」の基調を維持しながらも、社会的対立につながりかねない懸案を「社会的合意プロセス」によって円満に解消する成果をあげたと評価されています。