ことしから一部の学校で導入される予定の中学・高校の国定歴史教科書について、教育部は31日、最終版を公開するとともに、併用する検定教科書の執筆基準を発表しました。
教育部は、去年11月に国定歴史教科書の検討用見本を公開し、現場の教師や学者、専門家、一般市民などから意見を集め、それをもとに修正を加え、最終版を公開したものです。
最終版では、旧日本軍の慰安婦や植民地時代の親日派の行為に関する記述が強化されています。
一方で、故朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領が起こした1961年5月の軍事クーデターに関する記述で、クーデター勢力が前面に掲げた「革命公約」はそのまま記載され、引き続き論争を呼びそうです。
また、検討用見本では、大韓民国政府樹立年度について「大韓民国政府樹立」という表現ではなく「大韓民国樹立」という表現を使い、その年度を1948年としています。これについて、日本の植民地時代の1919年に樹立された大韓民国臨時政府の正当性を否定するものだという指摘が出ていましたが、最終版でも「大韓民国樹立、大韓民国政府樹立などで表現する多様な見解があることに留意する」との文言が追加されただけで、表現の修正はありませんでした。ただ、国定教科書と併用される検定教科書では「大韓民国樹立」と「大韓民国政府樹立」の両方を使用できるようにしています。
教育部は、最終本をホームページに掲載し、意見を集めることにしています。
朴槿恵(パク・クネ)政権は、現行の教科書を「左派的」として、歴史教科書の国定化を重要課題の一つとして進めてきましたが、市民団体や野党などは強く反発してきました。
そして、去年11月に公開された国定教科書の見本について、日本の植民地支配を美化しているという批判が出たことや、去年12月に国会で朴大統領の弾劾訴追案が可決されたことなどを受けて、教育部は、ことし3月から希望する学校を研究校として指定して国定教科書を主教材とし、2018年からは、各学校が国定と検定教科書の中から選択して使用できるように方針を改めています。
しかし、反発は収まらず、現在、国定教科書の廃止に向けた法案が国会に提出されています。