去年12月に尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領による非常戒厳が宣言された際、国家情報院長としての職務を怠った疑いがもたれている趙太庸(チョ・テヨン)前国家安保室長が逮捕されました。
ソウル中央地方裁判所は12日午前、「証拠隠滅のおそれがある」として趙前院長の逮捕状を発付しました。
趙氏は、尹前大統領の側近で、戒厳軍による政治家の拘束の動きなど、去年12月3日に大統領室から非常戒厳の計画の報告を受けながらも黙認し、法律で義務付けられた国会への通報を怠ったとして、職務放棄の疑いが持たれています。
また、特別検察官は、趙氏が国家情報院の監視カメラ映像を取捨選別して提出し、政治的中立を義務付けた国家情報院法に違反した疑いのほか、尹前大統領の弾劾審判当時、憲法裁判所と国会で虚偽の証言を行ったとみて、偽証、証拠隠滅などの疑いもあるとしています。
一方、趙氏は「大統領を十分に補佐できなかったことは申し訳ない」と述べつつ、容疑の大半を否認していると伝えられています。
尹前大統領が昨年12月、国内の混乱を理由に発動した非常戒厳をめぐっては、憲政秩序を脅かしたとして特別検察官が大統領側近らに対する捜査を続けています。
趙氏は、外交官出身で、アメリカ駐在大使や国家安保室長などを歴任し、2023年から国家情報院長を務めました。情報機関トップとして、戒厳政局にどこまで関与したのかが、今後の捜査の焦点となる見通しです。