韓国で、エネルギー政策を担当する新しい省庁「気候エネルギー環境部」が来月1日に発足します。
国会と閣議での議決を経て設置され、産業通商資源部からエネルギー部門を引き継ぐほか、韓国電力公社や発電5社、韓国水力原子力など20あまりの公営企業を管轄する大規模な省庁となります。
初代長官には、現・環境部長官の金星煥(キム・ソンファン)氏が内定しました。金長官は9日の記者会見で、「原子力発電を基盤に、風力や太陽光など再生可能エネルギーの比率を迅速に高める」と述べたうえで、「発足を“脱原発”と見てほしくはない」と強調しました。
政府は、原子力発電を基盤としつつ再生可能エネルギーを拡大する方針を掲げていますが、産業界からは「再び脱原発に向かうのではないか」との懸念も出ています。韓国では、文在寅(ムン・ジェイン)政権で脱原発が推進され、その後の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権で撤回された経緯があり、今回の改編に注目が集まっています。
新しい原発の建設について金長官は、「既存の計画は尊重するが、国民的な議論を経て判断する」と説明しました。政府がことし2月に策定した「第11次電力需給基本計画」には原発2基の新設が盛り込まれていますが、議論の結果によっては中止される可能性もあります。
一方、この省庁は環境部を中心に改編して設けられるため、規制が強まるとの見方もあります。そのため電力供給能力の低下や電気料金の上昇につながりかねないという指摘があり、韓国原子力学会は、「産業の原動力が弱まり、電力供給の不安が増す」と警告しています。
また、韓国水力原子力の労働組合も、「ドイツやイギリスではエネルギーと環境を統合した省庁が再び分離された例がある」として組織改編の撤回を求め、「この体制では電気料金の上昇と産業の萎縮は避けられない」と主張しています。