去年12月3日、「非常戒厳」を宣言する直前に行われた国務会議で、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の最側近である李祥敏(イ・サンミン)元行政安全部長官が、「非常戒厳」に反対し、尹大統領を引き止めたと警察で証言したことがわかりました。
韓国の複数のメディアが30日に報じたところによりますと、今月16日に行われた警察の取り調べで、李元長官は、「非常戒厳」をめぐる計画を知った国務委員らが反対したことを受け、尹大統領に「国務委員全員が反対している」と伝え、大統領を引き止めたと述べたということです。これは、「非常戒厳」に賛成した国務委員が2~3人いたと証言した金龍顕(キム・ヨンヒョン)元国防部長官の発言とは矛盾するものです。
また、李元長官は、「非常戒厳」について、「大統領による『高度の統治行為』だと考えていなかった」としたうえで、「軍隊を投入するほどの社会的混乱はなかった」と述べました。
さらに、李元長官は、「非常戒厳」の宣言を引き止める参謀らに対し、尹大統領が「この計画については誰も知らない。妻も知らない。妻に知られたら怒られそうだ」と話したと述べていたことから、尹大統領が金元長官や一握りの軍幹部とクーデターを企てていた可能性がうかがえます。
また、警察は、「非常戒厳」の宣言直後に、一部の国務委員が「正常な国務会議が行われたと見なしてもいいのか」と述べ、困惑していたという供述も取ったことを明らかにしました。
国務会議に関しては、韓悳洙(ハン・ドクス)元国務総理も、「非常戒厳」の宣言をめぐって、「尹大統領が、初めから国務会議を開くつもりだったわけではない」と話し、「国務会議はその手続きと方法に実質的な問題があった」と述べたことがわかっています。
法律上、大統領が「非常戒厳」を宣言するためには、国務会議での審議が必要となりますが、韓元国務総理の主張は、「非常戒厳」の違法性を裏付ける発言となりかねません。
一方、一連の発言に対して、尹大統領側の弁護団は声明を発表し、「捜査記録の流出は、被疑者の人権と防衛権を侵害する重大な犯罪行為に当たる」として反発しています。