ソウル地方裁判所は11日、元徴用工の遺族5人が2019年4月に日本製鉄を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、裁判に訴える権利がなくなる「消滅時効」を理由に原告敗訴の判決を言い渡しました。
消滅時効とは、一定期間の間に自身の権利を行使しなかった場合に、その権利が消滅する制度で、韓国の民法では、加害者が違法行為を「行った日」から10年が経過しているか、違法行為によって損害が発生した時点、または加害者を「知った日」から3年で請求権が消滅すると規定されています
元徴用工に対する違法行為が行われた日からはすでに10年が経過しているため、被害者側が日本企業の違法行為によって被害を受けたこと、またはどの企業が被害を与えたのかを知った日がいつなのかが訴訟の争点となっていました。
元徴用工の遺族が主張する基準は、韓国の最高裁判所が2018年10月に被害者らが日本企業を相手取って損害賠償請求訴訟を起こす権利があると最終判決した再上告審の確定判決が行われた日としています。
この確定判決が行われてから6か月後の2019年4月に損害賠償請求訴訟を起こしたため、遺族らは消滅時効の3年が経過していないと主張しています。
一方、日本製鉄側は、「最高裁が損害賠償請求権を認めた最初の判決が出されたのは2012年5月であるため、すでに消滅時効の3年が経過した」と主張していて、韓国の裁判所がこの主張を受け入れたことになります。
ソウル地裁は去年8月と9月にも、元徴用工の遺族らが日本製鉄と三菱マテリアルを相手取って起こした損害賠償請求訴訟で「すでに消滅時効が成立した」として原告敗訴の判決を言い渡しました。