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歴代大統領には本人の愛唱歌だったり、あるいは大統領府に招いてその歌を聞いたりしたお気に入りの歌手がいました。その中でも一番は何と言ってもムン・ジェイン大統領でしょう。K-ポップの全盛期だということもありますが、海外訪問の際に必ず歌手を同行しました。代表的なケースがBTSです。

BTSがムン大統領の外交場面に初めて登場したのが2018年10月のフランス訪問の時でした。ヨーロッパ公演中だったBTSがフランスで行われた「韓仏友情のコンサート」で祝賀公演をしたことで、大統領はKポップの威力、BTSの威力を実感したようです。

その後は何度も各種公式行事にBTSを招いています。一番の圧巻は去年の国連総会特別イベント「持続可能な開発目標モーメント」の開会セッションでのBTSの演説とパフォーマンス映像でした。この時、BTSは外交官パスポートまで発給されています。

同じようにモンスターエックスも2019年6月のムン大統領のノルウエイ訪問の際に現地で行われたコンサートのフィナーレを飾りました。そして今回、ムン大統領最後の海外訪問となったアラブ３カ国訪問ではドバイで行われたコンサートでサイが江南スタイルを披露しました。このようにムン大統領が外国を公式訪問する際には必ず現地でK-ポップのコンサートが開かれ、会場には大統領夫妻の姿がありました。

外交場面にK-ポップの歌手たちを登場させたのは、パク・クネ大統領も同じです。パク大統領が中国、フランス、チェコを訪問した際には現地でKポップのコンサートが開かれ、コンサート会場には大統領自身も出席しました。

当時の写真を見ると、中国で行われた「韓中友情のコンサート」には少女時代とスーパージュニアの姿が写っています。またチェコで行われた「Kポップコンサートインプラハ」の写真にはシャイニーとレッドベルベッドが写っています。

またパク大統領の愛唱歌として有名なのが、コブキ（タートルズ）のビンゴという曲です。パク大統領というとクラシック音楽でも聴いていそうなイメージですが、テレビに出演した際にも愛唱歌はこの曲だと話していました。軽快なメロディと前向きの明るい歌詞が好きだということでした。

イ・ミョンバク大統領の大統領就任式の時にはクラッシックの歌手ではなく、キム・ジャンフンさんが登場し話題になりました。この席でキム・ジャンフンさんは６枚目のアルバムに収録された『わが喜びの日』という曲を歌っています。

歌手のパク・ヒョシンさんは特別な経験をしています。ムン・ジェイン大統領とイ・ミョンバク大統領の２回にわたって大統領府に呼ばれて歌いました。ムン大統領の時はトランプ大統領の訪韓の際の国賓晩餐会の席での公演でした。ヒット曲「野生花（야생화）」を熱唱しました。

ところがイ・ミョンバク大統領時代の公演の際には辛い経験をしたとインタビューで語っています。当時彼はちょうど兵役で軍に入隊したばかりの頃でした。大統領が出席する公式行事に初めて参加することになり緊張したまま、厳しい警戒の中で早朝５時から午後２時までの９時間、寒さの中で建物の外で待機させられたといいます。さらにようやく舞台に上がったものの、伴奏が歌の途中で途切れ、警備チームから大統領は退場されたのでもう帰っても良いと言われたというのです。

またイ・ミョンバク大統領の愛唱歌としてはユン・ボクヒの「이거야 정말（これは本当に）」という曲が挙げられます。この曲に関してはイ大統領が現代建設にいた頃、当時の現代グループの会長、チョン・ジュヨン会長とお酒を飲むときにはよく歌っていたと話しています。

ノ・ムヒョン大統領は、歴代大統領の中でもノ・テウ大統領と共に歌を歌うのがお好きだったようです。愛唱歌もたくさんあったようで民主化運動の代名詞のような「임을 위한 행진곡（あなたのための行進曲） 」や「상록수（常緑樹）」「아침 이슬（朝露）」のような曲の他にも、釜山ロッテの応援歌としても有名な「부산 갈매기（釜山カモメ）」も好きでよく歌っていたそうです。 

面白いのは軍人出身のチョン・ドファン大統領、ノ・テウ大統領、パク・チョンヒ大統領の愛唱歌です。

ノ・テウ大統領とパク・チョンヒ大統領は自分で作詞・作曲した曲があります。パク大統領は1970年代に農村改革運動のセマウル運動を行いましたが、このセマウル運動の歌を直接、作詞作曲しています。またノ・テウ大統領は軍人だった頃に、21連隊歌、9空輸旅団歌などという自分が赴任した部隊の軍歌を直接作っています。

またチョン大統領は軍人らしく愛唱歌も軍歌だったようです。

歴代大統領の愛唱歌や愛した歌手たちを見て来ましたが、やはりその時代、そして大統領になるまでの人生が反映しているようです。さて、次の大統領はどんな歌がお好きなのでしょうか。