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文化

映画『マイ・スイート・ハニー』

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2024-05-01

玄海灘に立つ虹


5月の暖かい春の季節にあわせて、今回はロマンチックコメディーをご紹介したいと思います。本日ご紹介する映画は、イ・ハン監督の『マイ・スイート・ハニー(달짝지근해)』です。ユ・ヘジン、キム・ヒソン主演で、韓国では昨年ヒットした作品で、日本では5月3日に公開されるそうです。脚本は大ヒット映画『エクストリーム・ジョブ』のイ・ビョンホン監督なので、基本的にはコメディーなんですが、イ・ハン監督特有の優しさに包まれた映画でもありました。イ・ハン監督というと『ワンドゥギ』(2011)や『無垢なる証人』(2019)のような障がい者や外国人労働者などを描きつつ、どこか温かみを感じる映画を作ってきた監督で、今回もなるほどイ・ハン監督らしいなと感じました。

ユ・ヘジン演じるチホは、製菓会社の研究員ですが、仕事以外にまったく興味のない、女性と付き合ったことがないどころか人付き合いが苦手な男性です。一方のキム・ヒソン演じるイルヨンは猪突猛進タイプで、底抜けに明るいんですが、未婚の母で、1人で娘を育てる寂しさも感じています。ユ・ヘジンさんはさすが、どんな役でも演じられるんだなと改めて感心しましたが、太陽のように明るいイルヨンはキム・ヒソンさんにぴったりで、そのまんまな感じがしました。

イルヨンはローン会社で働いているんですが、そこへチホが訪ねてきます。チホはまじめでお金を使うあてもないんですが、博打好きでまともに働かない兄がいて、兄の借金を返すため、でした。ところが、イルヨンが初対面でチホに好意を持つんですね。好意を持ったら突き進むタイプなんですが、チホは女性に好かれるなんて思ってもみないので、好意に気付かない。そんなチグハグな2人なんですが、最初は一緒にご飯を食べる友達として親しくなって、だんだん恋人に発展していく…という物語です。

もちろん話はそんな簡単には進まず、チホの兄(チャ・インピョ)が、恋の邪魔をします。シングルマザーのイルヨンが、お金目当てで弟に近付いたに違いないと思い込むんですね。未婚の母に対するひどい偏見の言葉を吐き、イルヨンは傷つきます。未婚の母に対する視線は、実際、日本以上に韓国は厳しいなと感じます。日本では私の周りでもけっこう結婚せずに子どもを産んで育てている女性がいますが、特に差別的なことを言われたり、というのは私の知る限りはあまりないと思います。韓国では未婚で子どもを産んだ場合に母にも子にも良くない視線を向ける人たちがいて、それで子どもを仕方なく海外へ養子に出す海外養子縁組が多いとも聞きます。

例えば日本出身で韓国で活動しているタレントのサユリさんが未婚のまま人工授精で子どもを産んだことに対しても、韓国では祝福の声もあると同時に批判する声もけっこうあって驚きました。

そもそもイルヨンの場合、娘の父親に当たる男性が暴力的で、一緒に暮らせるような相手じゃないんですね。それで一人で産んで育てていることは褒められこそすれ、他人に責められるようなことじゃないと思うんですが、映画の中では偏見の目を向けられます。一方で、イルヨンの娘も、父に当たる男性のトラウマがあるので、男性が母に近付くこと自体が嫌なんですね。チホもイルヨンも、家族の反対に悩みます。


そしてこの映画、カメオ出演が豪華すぎるのも見どころの一つで、見てのお楽しみなのですが、主演級が何人もカメオで出演しています。それもある意味ギャグなんだろうなと思います。

私が特に好きなのは薬局のシーンなんですが、チホが恋でドキドキするのが初めての経験なので何かの病気なのかと勘違いして、その症状を薬局で訴えるシーン、またその相手をする薬局のおばちゃんもおかしくて、笑えました。ゲラゲラ笑いながらも優しい気持ちになれるのは、チホとイルヨンの純粋過ぎる愛を感じるからなんですが、不器用ながらも初々しい恋をする大人がかわいいというか、応援したくなる2人でした。

チホも実は複雑な家庭で育っていて、それで兄に心理的に依存していたり、兄以外の人とうまく付き合えなかったりということだったのですが、そういうのもひっくるめて、いろんな形の家族があって、それぞれいろんな事情を抱えながら、それでも素敵な恋もできるという、肯定感いっぱいの映画でした。日本でももうすぐ公開なので、カメオにも期待しつつ、劇場で見てほしいなと思います。

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