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文化

パク・チャヌク監督作

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2024-06-05

玄海灘に立つ虹


〇今日は特定の作品でなく、パク・チャヌク監督の作品についてお話したいと思います。というのは最近、パク・チャヌク監督の「同調者(The Sympathizer)」というドラマが世界的に話題になっていて、私も見始めたところなんですが、この最新作「同調者」も含めて、パク・チャヌク監督の作品を一度振り返ってみたいと思います。ポン・ジュノ監督と共に韓国映画界を代表する監督ですが、2022年にカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した『別れる決心』はこのコーナーで紹介したので、今回は別の作品を取り上げようと思います。

〇まずは「同調者」ですが、韓国ドラマではなく米国のドラマで、背景は1970年代のベトナム戦争、二重スパイの物語です。ということで英語とベトナム語が飛び交うドラマです。ピュリツァー賞受賞の同名小説が原作で、演出はパク・チャヌク監督以外にもいて、1話から3話がパク・チャヌク監督の演出だそうです。さすが最初からぞくそくするような緊張感で、映画みたいというか、もはや映画とドラマの境界はないんだなと思いますね。
米国のドラマですが、主人公は北ベトナムの共産主義者です。が、米国にも憧れを持っていて、結局は二重スパイというのも戦時下で生き残るための選択であって、本心と行動は別物かもしれない、と感じました。敵味方に明確に分けられないキャラクターが主人公というのが興味深かったです。『別れる決心』でもタン・ウェイ演じるソレが犯人か否かをめぐって映画終盤までざわざわした気持ちでしたが、観客を惑わすのはパク・チャヌク監督作の特徴だと思います。もう一つ、西洋と東洋が交差する点で、映画『お嬢さん』(2016)との共通点も感じました。


〇パク・チャヌク監督の出世作は『JSA』(2000)で、私も大好きな作品ですが、実はちょっとパク・チャヌク監督の他の作品とは違う感じがするので今回は『オールド・ボーイ』(2003)からお話したいと思います。世界的に知られるようになったのはカンヌ映画祭グランプリ受賞作 『オールド・ボーイ』ですよね。原作は日本の漫画で、主人公オ・デスがある日突然誘拐され、わけもわからず15年も監禁されるという話でしたが、とにかく強烈でした。特に主演のチェ・ミンシクが生きたタコを食べるシーン、まるまるかぶりつくのがグロテスクというか、なのでパク・チャヌク監督作は好きな人はすごい好きなんですが、苦手という人もけっこういますよね。
名場面として高く評価されるのは、金づち片手に十数人を相手にケンカする2分39秒をワンテイクで撮ったアクションシーンで、何回見ても「うわ…」とうなってしまいます。


〇『お嬢さん』(2016)もカンヌのコンペティションにノミネートされた作品ですが、日本関連の映画で、助監督の藤本信介さんから直接お話うかがったこともあります。時代背景は日本植民地時代、「藤原伯爵」と名乗る詐欺師(ハ・ジョンウ)と、スッキ(キム・テリ)が日本人のお嬢さん、秀子(キム・ミニ)を騙して財産を奪い取ろうと画策するんですが、3部構成でまさかの展開になっていきます。藤本さんの話で印象的だったのが、「一枚、一枚、絵を撮っているようだった。パク・チャヌク監督はその絵の隅々まで徹底して作る監督」ということでした。一つのエピソードとして、秀子の部屋に置かれた日本人形が、日本でのロケハンの時に偶然見つけた人形だったんですが、わざわざ作家を探して取り寄せたそうです。その話を聞いて映画を見直したんですが、出てくるのはほんの一瞬で、ああ、ここまでこだわって作るのかと感嘆しました。

〇最近、映画人が選ぶ韓国映画100選が発表されましたが、その中で作品数が最も多かったのがパク・チャヌク監督で7本が選ばれたそうです。決して多作の監督ではないので、作った映画の多くが選ばれているということです。これは毎度新たな挑戦をしている証拠だと思います。現在60歳ということですが、まだまだこれからも傑作を生みだしてくれるという期待を抱かせてくれる監督です。
最新作「同調者」は韓国ではクーパン・プレイで見られるんですが、検索したところ日本ではまだ見られないみたいです。ぜひ日本でも早く見られるようにしてほしいなと思います。

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