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ⓒ Seoul High Court

ニュースでもお伝えしましたが、韓国で初めて裁判所が同性カップルの法的な権利を認めました。これは同性カップルの男性が、パートナーの健康保険の被扶養者としての資格認定を求め、国民健康保険公団を相手取って起こした行政訴訟の2審で、男性側が勝訴したものです.裁判所は1審の判決では、現行法上、同性カップルの関係を事実婚の関係と評価するのは難しいとして、原告の敗訴を言い渡していました。しかし今回の2審では「同性という理由だけで、事実婚と同じような形の共同体を営むカップルを事実婚関係の人々と差別するのは、平等の原則に反する」として、1審の判決を覆しました。

画期的な判決だと言えます。韓国は日本に比べてまだまだ同性カップルに対する社会の目は厳しいものがあります。

日本の場合、「パートナーシップ制度」があります。同性同士の婚姻は法的に認められていないものの、自治体が独自にLGBTQカップルに対して「結婚に相当する関係」であるという証明書を発行し、様々なサービスや社会的配慮を受けやすくする制度です。この「パートナーシップ制度」が日本では255の自治体で認められています。ただ「パートナーシップ」は法的な婚姻とはちがうので、法律上の家族とは認められず相続や手術の際の同意書を書く権利もありません。しかし少しずつ日本の社会は変わりつつあるようです。共同通信が実施した「同性婚制度を認めるかに関する世論調査」の結果、全体の64%が認めるべきだと答えていました。年齢別には30代以下の若者層は81.3%が認めるべきだと答えていました。一方で60代以上の壮年層で認めるべきだと答えた人は51.4%でした。先日、岸田総理の秘書官が更迭された理由も「同性婚をめぐる差別的な発言」でした。保守的な考えが残っているのも事実でしょう。

では韓国はどうでしょう。2021年韓国ギャラップが全国の18歳以上の1001人を対象に行った「同性婚の法制化に対する」調査で、法制化に賛成と答えた人が38%、反対が52%、分からない11%という結果が出ました。2019年にも同じ調査が行われましたが、その時の結果と比較してみると賛成は3%ポイント増え、反対は4%ポイント減りました。少しずつ賛成と反対の差が縮まっているとはいえ、依然として反対世論の方が多いというのが韓国の現状です。

同性婚の法制化に対して賛成という立場の人々は主に個人の自由を最大限尊重すべきだという立場です。ネットには「誰かを愛して結婚するということは個々人の基本的な人権であり、選択の自由であり、これを守るのは法律が存在する理由だ」という意見が書かれています。また「同性婚は同性愛者の人権、社会的な権利保障の側面から必要であり、彼らが法律で保護されていないということ自体が差別だ」という主張もでています。

では反対の立場の人々の意見はどうでしょう。反対意見はほとんどが宗教界から出されています。韓国キリスト教総連合会の関係者は「同性愛は創造秩序に逆らう非倫理的な行為であり、同性婚は男女の結合で成り立っている家庭を保護している憲法と民法、刑法の秩序にも反するものだ」と述べています。またアメリカに暮らす在米韓国人の男性は「同性カップルが異性間の結合による夫婦と比較されて差別を受けてはいけないという論理には同意する。しかし男女間の結合の伝統的な意味を破壊してもいけない、同性婚の合法化ではない、他の制度を作り同性カップルが差別を受けないようにすることが重要だ」と主張しています。

この問題を取り上げていた新聞の記事でも論説委員の書いた結論が「同性カップルもすべての分野で異性間の結婚と完全に同じ待遇を要求することは難しいことを理解する必要がある。同性愛者だという理由だけで差別し、白眼視してはいけないが、だからといって異性愛者と完全に同等に扱ってほしいという主張を受け入れることも難しい」と言うものでした。同性カップルが韓国社会で堂々と生きていくのはまだ少し時間がかかりそうです。

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