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ライフスタイル

イルカの「ピボンイ」

#マル秘社会面 l 2022-09-21

玄海灘に立つ虹

ⓒ YONHAP News

1頭のイルカが話題になっています。「国内の水族館に残された最後のミナミハンドウイルカ」ピボンイです。ミナミハンドウイルカは国際的な絶滅危惧種で、韓国では済州沿岸に120頭余りが生息しています。

韓国の海洋水産部は先月3日にピボンイを海に放流すると発表しました。ただ長期間水族館にいたため、すぐにそのまま放流するのではなく野生適応訓練を行ってから放流するということです。現在もピボンイは適応訓練中です。ピボンイは2005年4月、済州の飛揚島(ピヤンド)沖で混獲されました。それで捕らえられた地域の名を取ってピボンイと名付けられ、その後、17年間水族館で過ごしてきました。同じように不法に捕獲されイルカショーに使われていた別のミナミハンドウイルカは3頭が2013年に、2頭が2015年に、そして2頭が2017年にそれぞれ海に放流されました。捕獲が禁止されているミナミハンドウイルカを違法に買い取り、イルカショーに動員した疑い(水産業法違反)で水族館が有罪判決を受け、イルカは国に没収となりその後海に放流されたものです。しかしピボンイはあまりに昔に捕獲されたという理由で不法捕獲の公訴が時効を迎えていたためそのまま忘れ去られていました。

今回海洋水産部がピボンイの放流を決めた背景にはドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」の中で言及されたこともあったようです。現在ピボンイは済州島の入り江から300メートル沖の海の真ん中に設置された直径20メートル、深さ8メートルの円形の生け簀に移され適応訓練を受けています。ピボンイの海洋放流は5段階に分けて実施されます。第1段階、放流可能性の診断と放流計画の樹立→第2段階、飼育水槽内での適応訓練→第3段階、生け簀の設置および移送、そして現在は4段階目の生け簀内での野生適応訓練が進められています。野生で生きる方法を回復する過程です。この過程が終われば放流の可能性を最終的に判断する第5段階となります。


適応訓練を受けている生け簀が設置された地点は、済州沿岸に生息する120頭あまりのミナミハンドウイルカの生息地です。専門家は、ピボンイの海洋放流成功の可否を分ける最重要要因として「野生の群れへの合流」をあげています。ミナミハンドウイルカは高い社会性を持ち、数十頭の群れをなして生活します。彼らが頻繁に行きかう通り道でピボンイと野生の群れの交感を誘導し、合流の可能性を高めようということです。また生け簀には生きているサバやカンパチ、アイゴを1日に15~20匹ほど供給します。水族館と違い、生きている魚を捕獲することが野生放流訓練の第一歩です。実際最初のうちは生きている魚を投げ入れてもピボンイは食べなかったそうです。でも現在はちゃんと食べられるようになりました。

しかし、ピボンイの放流に対しては憂慮の入り混じった視線もあります。 市民団体動物自由連帯の代表は「生きた魚をよく食べる? 群れとよく見つめ合っている? そのような姿は(放流後に死んだと推定される)ピボンイの仲間のイルカでもすべて観察されています」と語っています。

これまでに3回、水族館で暮らしていたミナミハンドウイルカが海に放流されましたが、一部は放流後に目撃されておらず野生の生活に適応できずに死んだと推定されています。

これまでの放流経験からみて、水族館での生活が比較的短く、かつペアで放流すれば無事に生存していることが分かっています。ペアで放流すると互いに競争したり、真似しあったりすることで野生の本能が早く回復するといいます。しかしピボンイは水族館で17年も暮らし、現在の推定年齢は23歳、人間では40代半ば、かつ1頭での放流となります。


ピボンイを自然に返そうという人たちの主張は「水族館生活が何年以上であれば野生に放流しても生存は不可能だということであれば、ピボンイは結局水族館で死んでいくしかありません。海に帰れずに水族館で生涯を終えることがピボンイにとって幸せなのでしょうか 」というものです。2022年8月現在韓国には、5つの水族館に21頭のイルカやクジラの仲間が飼育されています。これらのイルカやクジラは正規のルートで日本やロシアなどから購入されたものなので自然に返すという話は出ていません。さて済州島の沖の生け簀の中で海に放流される訓練をうけているピボンイ。適応が難しいと判断されれば水族館に戻ることもあるようです。

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