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文化

「サソルジルム時調、青い山の中に」ほか

#国楽の世界へ l 2023-05-09

国楽の世界へ

「サソルジルム時調、青い山の中に」ほか

時調(シジョ)は、韓国固有の定型詩です。初めと真ん中と終わりという意味の、チョジャン、チュンジャン、ジョンジャンの三つの部分で構成されます。ひとつの部分ごとに15文字ずつ、全体が45文字内外のとても短い詩です。簡潔な形式の中に、節制した表現を用いて、気持ちや景色を表します。ところが、芸術家は、一度形式が決まっても、その枠を崩そうとする傾向があるようです。徐々に内容を追加し、時調がどんどん長くなったのです。もともとの形式の時調を「平時調(ピョンシジョ)」といい、長くなった時調は「サソル時調」といいます。時調は、もともと詩ではなく、歌の歌詞でした。拍子やリズムが決まっていて、適切な歌詞をつけて歌ったのが時調だったのです。もともとの平時調は、ゆっくりと余裕に歌うものでした。でも、サソル時調を平時調の枠に合わせて歌うと、歌詞を速く歌わなければなりません。そのため、平時調に比べると、活気があるのが特徴です。


「サソル」は歌詞が多いということで、「ジルム」は歌の出だしで高い音を出すということです。山の方から銃を持って降りてくる猟師に対し、あらゆる動物を捕らえても、相棒を失って悲しむカリは撃たないでくれと頼む内容です。すると、猟師も、自分がどんなに無知な者であっても、そんなに哀れな動物は捕えないと答えるのです。恋人と別れたばかりの自分が世の中で一番かわいそうだというお話を、猟師との対話に例えて歌っているのです。平時調がサソル時調に変わり、落ち着いた雰囲気が明るく活気にあふれ、歌詞もユーモアに変わりました。韓国の民謡にも、似たような歌があります。自分のことを捨てて去ってしまう人は、遠くまで行けずに足の病気になるだろう、などという内容の歌詞です。別れの悲しみをユーモアに解釈する歌です。


民謡は、作詞や作曲をした者が明らかではありません。誰でも自分の気持ちを自ずとリズムに合わせて歌うものです。そのように長い歳月、口から口へと伝わり、歌詞ができます。形式が決まると、また少しずつ変化を与え、自分ならではの個性を表現するミュージシャンも出てきます。最近は、その変化がとても大胆な場合もあるようです。今日の最後は、先ほどの曲を大衆的な歌謡曲の形に変えた歌です。歌詞やリズムは先ほどの民謡と同じですが、雰囲気は全く違う曲のようです。これが国楽と言えるのかと思う方もいらっしゃるでしょう。若者は伝統的な歌より聴きやすいと感じそうな気もします。いつか歳月が流れると、このような歌も伝統のひとつと思えるようになっているかも知れません。

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