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文化

エッセイ『至極私的なネパール』

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2023-02-16

玄海灘に立つ虹


〇本日ご紹介する本は、スーザン・シャキヤの『至極私的なネパール(지극히 사적인 네팔)』という本です。ネパール出身、韓国在住の著者が、ネパールの文化や歴史について紹介する本で、文在寅前大統領が推薦したことで話題になりました。文在寅大統領は昨年5月に任期を終えたのですが、最近、慶尚南道の梁山(ヤンサン)市に書店を開くというニュースを見ました。退任後は政治から離れ、表情も穏やかになった気がします。韓国の大統領は捕まったり自殺したりと、退任後、残念な話が多いなかで、文在寅前大統領が書店を開くというニュースには、なにかホッとしました。

書店はこれからみたいなのですが、本はすでに何冊か推薦していて、推薦した本が次々ベストセラーになっているということなんですが、『至極私的なネパール』については、「ナマステというあいさつは、『私の中にいる神があなたの中にいる神を尊重する』という意味です。『至極私的なネパール』はヒマラヤのネパールではなく、ネパールの人たちのネパールを知りたければ、読む価値のある、いい本です」というふうにツイッターを通して推薦していました。


〇私はインドには行ったことがあるんですが、ネパールは行ったことがなく、それこそヒマラヤくらいしかイメージがなかったので、初めて知る内容ばかりで、「へえ」「へえ」を連発しながら読みました。著者のスーザン・シャキヤさんは、韓国のテレビ番組「비정상회담」、日本語では「アブノーマル会談」と訳されるみたいですが、비정상회담に出ていたことで知られます。最初にナマステについての話があるんですが、私の母は長年ヨガの先生をやってまして、ヨガを始める時にいつも「ナマステ」とあいさつするので個人的にすごく聞き慣れたあいさつですが、インドのイメージを持っていました。インドでもネパールでも言うみたいですね。会った時、別れる時、謝る時などいろんな場面で「ナマステ」と言うそうで、先ほどの推薦にあった通り、「私の中にいる神があなたの中にいる神を尊重する」という意味で、それだけ神の存在が重要なんですね。ネパールの人口の80%がヒンドゥー教徒だそうで、人々の暮らしもヒンドゥー教と共にあるというのが読んでいてよく分かります。


〇ネパールは地理的に南はインド、北は中国という大国に挟まれた国で、本の中では「サンドイッチの中のトマト」と表現されていました。上下から圧力がかかるとはみ出してしまうような、難しい立場という意味です。内陸で、海に接していないので海外との貿易はインドを通らないと運べず、二重に関税がかかる。空輸という方法はありますが、自動車など空輸できないものもたくさんありますからね。というような様々な事情で、ネパールにとってインドの影響力は非常に大きいようです。隣国との関係というのは、どこもそれなりに難しいのかもしれないなとも思いました。


〇ヒマラヤについても出てくるのですが、ネパールのヒンドゥー教徒にとってヒマラヤは神聖な場所で、ヒマラヤに登ることは神の頭を踏みつけるような行為だそうです。なのでヒマラヤの案内人「シェルパ」は登る前に「山を踏んですみません」という意味を込めた儀式をするのだそうです。 

スーザン・シャキヤさんは韓国からの登山客の通訳として登ったそうですが、軽く考えていて、大変な目に遭ったという体験記がつづられていました。海抜5364メートルのベースキャンプで高山病にかかるのですが、誰かに後頭部をハンマーで殴り続けられているような痛みというので、相当大変だったんだと思います。シェルパが生のニンニクとタマネギを食べさたり、独特の治療法を施したおかげで幸い一晩で回復したそうですが、やっぱり当然ですが素人がいきなりヒマラヤは危険ですよね。


〇この「至極私的な〇〇」というのはシリーズになっていて、フランス、ロシアなども出ているのでまた読んでみたいなと思います。たぶん内容的に日本語には翻訳されないだろうとは思いますが、韓国語で読めるという方、良かったら読んでみてほしいなと思います。


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