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消えたピアノ教室

#マル秘社会面 l 2023-11-29

玄海灘に立つ虹

ⓒ Getty Images Bank
昔は中産階級の象徴だったピアノが今や捨てるのも難しい粗大ごみになろうとしています。1980年代から1990年代にかけて飛ぶように売れていたピアノですが、その頃買って今では弾く人もいなくなった中古のピアノ。専門業者に処分を頼むと1台当たり平均10万ウォン程度の費用を支払わなければなりません。数年前までは中古のピアノとして売ることもできましたが、今では粗大ゴミです。なぜこんなことになってしまったのでしょう。
なぜかというと、一番の理由は需要がないからです。30年以上ピアノの販売をしてきたと言う男性は「こんなに急激にピアノの価値が下落したのも初めてで、残断だ」と話します。昔は使わなくなって売られたピアノも修理すれば半分以上が中古ピアノとして再度売れたものの、現在では10台中8台は廃棄処分されてしまうといいます。中産階級の家庭のシンボルだったアナログピアノがこんな風に捨てられてしまうのには理由があります。低出産です。子供の数が急激に減り、ピアノなどのお稽古事の教育市場が直撃打を受けています。
中央日報がこの5年間の小学生の塾やお稽古事の現況を分析した結果、ソウル市内のピアノ教室の数は2019年に1295個あったのが今年は1133個と12.5%も減ってしまいました。そしてその穴を国語、英語、数学などの大学入試に直結した塾が埋めて増加しています。ソウル市ノウォン区でピアノ教室を運営している女性は、「前は近くにピアノ教室がうちの他にも4個ありましたが、現在はみんな閉じてしまい今はうちだけです」言っています。そしてピアノ教室のあったところには英語と数学の塾ができました。
一方で韓国産の中古ピアノをこれまで多数輸入してきた中国市場にも変化が起きています。韓国で1980-90年代にピアノブームが起きたのと同じように、中国では2010年以後、中産階級のシンボルとしてピアノブームが起きました。それと共に韓国産の中古ピアノの販売量も増えたのですが、コロナ禍により中国の内需市場が冷え込み、さらに中古ピアノの輸入に対する中国政府の規制が大幅に強化され、事実上韓国からの輸出が不可能になってしまいました。韓国の家庭からピアノが消えたもう一つの理由は騒音問題です。多くの人が暮らすアパートなどでは、ピアノを練習する音は騒音になってしまいます。騒音問題に対処するために一部の家庭ではデジタルピアノを購入する人も増えています。
もともと韓国では小学生がお稽古事としてピアノを習う時にはピアノ教室に行き練習をしていました。先生とのレッスンの時間以外にもピアノ教室で一人で練習することができます。またピアノのレッスン自体が韓国では週に1回程度ではなく毎日、あるいは1日おきくらいに行われてきました。そしてほとんどの子供がピアノを習うのは小学生まで、中学に入る前に辞めてしまいます。中学からは入試の勉強が本格的に始まるからです。そして中学以後もピアノの練習をするのは、音大を目指す人だけでした。そのためピアノの販売店では「これからは家庭でも入試などのために必要な時にだけピアノを借りて弾くなど、ピアノも共有の時代になろうとしている。中古ピアノ市場もだんだんと高価なブランド製品中心に高級化する可能性が大きい」と分析しています。高級ピアノとしては日本のヤマハのピアノは韓国でもよく知られており、街にはヤマハピアノの代理店もありますし、ヤマハ音楽教室は韓国でも運営されています。
一方、もともと韓国には二大国産ピアノメーカーがありました。ヨンチャンピアノとサミクピアノです。どちらも1950年代後半に創設され、80年代から90年代にかけて大きく業績を伸ばしました。しかし2000年代になってからは経営が厳しくなっています。1990年代の半ば以後、韓国の住居形態はそれまでの一戸建ての住宅からアパート、マンションへと変わり、それと共に入学卒業の贈り物もピアノからパソコンへと変化しました。そしてそれに伴いピアノ市場も急激に委縮してしまいました。それでも世界的な音楽コンクールでは毎年、韓国人ピアニストが入賞しています。決してピアノを弾く人が減っているわけではありませんが、もう家族団らん、居間にピアノを置き、子供が弾いてお父さんとお母さんがニコニコ笑っているような、そんな風景は流行らないということのようです。

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