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大雨に対する対策

#マル秘社会面 l 2022-09-14

玄海灘に立つ虹

ⓒ YONHAP News

8月の集中豪雨、そして9月の台風11号により韓国は大きな被害を被りました。そしてその対策が相次いで発表されています。その具体策を二つのキーワードでお伝えします。地下トンネルと半地下住宅です。

まず最初は地下トンネルです。8月の集中豪雨でソウル市内はあちこちで道路が冠水し、地下鉄やバスなどの運行にも影響が生じ、道路にあふれた雨水によりソウルの都心では多くの車が水につかりました。その対策として出てきたのが、雨水を排水するための地下トンネルの建設です。

ソウル市のオ・セフン市長は先月10日に浸水脆弱地域6カ所に雨水排水用の地下トンネルと作ると発表し、今週具体策が発表されました。まず2027年完成を目標に江南駅、光化門、トリム川の3カ所に地下トンネルを建設します。江南駅とトリム川は8月の集中豪雨の際に、そして光化門は12年前の大雨の際に大きな被害のあった地域です。現在、ソウル市の排水施設は1時間当たり95ミリの雨に耐えられるように設計されています。しかし8月に江南駅周辺に降った雨は110ミリ以上でした。そこで110ミリ以上の大雨にも耐えられる排水施設、地下トンネルを作ることになりました。実は雨水排水用の地下トンネル事業は2011年にウミョン(牛眠)山一帯に降った豪雨の被害を受け、当時のオ市長が設置を推進していた事業でした。それが市長が変わったことで途中で一部立ち消えになり、今回11年ぶりに再開されます。雨水用の地下トンネルは前回の事業の際に、国内で初めてソウルのシンウォル洞に作られ、そのおかげで今回の集中豪雨でもヤンチョン区には大きな被害は出ませんでした。


もう一つのキーワードは半地下住宅です。8月の集中豪雨の際に外信でも報道された悲劇が、映画『パラサイト 半地下の家族』で広く知られた「半地下」で暮らす家族の死でした。家族4人が急速に流れ込んできた雨水により家の中から出られずに、そのまま溺死してしまいました。

一家は持病がある70代の母、生活保護受給者でダウン症の発達障害の姉、13歳の娘、そしてこの3人を一人で養っていた百貨店の免税店で働く40代の女性でした。親子3代、女性ばかりの家族は半地下住宅に暮らしていました。貧困が彼女たちを「半地下」の住宅に住まわせていたのです。

集中豪雨後、ソウル市は「半地下世帯安全対策」を発表しました。その内容は▼地下・半地下を住居目的で作れないように法を変える▼10~20年猶予期間を経て既存の半地下住宅をなくす▼常習浸水地域の地下・半地下住宅居住者に公共賃貸住宅の入居を支援するなどです。統計庁人口住宅総調査によると、2020年全国地下・半地下住宅は32万7320世帯。ソウルに半分を超える20万849世帯(61.4%)が集中しています。国土研究院が昨年まとめた「地下住居現状分析および住居支援政策課題」によると、首都圏の地下・半地下の賃借世帯の平均所得は182万ウォン。アパートの賃借世帯の平均所得(351万ウォン)の半分未満です。

ソウル市の対策の核心は公共賃貸住宅への入居支援です。現在のソウル市内の公共賃貸住宅は24万戸。しかし昨年ソウルで公共賃貸住宅に入居したのは1669世帯、その中で半地下住宅に暮らしていた家族は247世帯(14.8%)に過ぎません。半地下に暮らす人々が公共賃貸住宅に入居できない理由は、入居するための保証金が払えない、入居後の管理費が払えない、そして炊き出しなどの支援団体がいない新しい町への引っ越しが不安、などです。

結局半地下住宅問題の根本は貧困のようです。韓国はこれまで日本と違い地震や台風など自然災害による被害はあまり大きくありませんでした。ですから安易な対応をしていた側面もあります。しかし地球の気候変動により韓国も台風や集中豪雨への対応をこれ以上遅らせることはできません。そのような危機感がソウル市や政府の対応に反映したようです。どうかこの危機感がきちんと継続しますように。

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